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ふるさと納税で損しない!失敗例から正しい使い方を解説
ふるさと納税は、「納税」という言葉がついていますが、実際には寄付だということを聞いたことはありませんか?
返礼品がたくさんもらえて、なんだかお得な制度だと思ってました。
間違った使い方をして損をしてしまうケースもあるので、しっかり学んでいきましょう。
この記事では、正しい「ふるさと納税」の使い方をわかりやすく解説していきますね!
※本記事では「寄附」「寄付」の表記の混在があります。「寄附」は専門的な用語や名称を示す場合に、「寄付」は一般的な用語を示す場合に、それぞれ使用しています。
目次
はじめる前に確認しよう!「ふるさと納税」の限度額
そもそも、ふるさと納税って何?
生まれ故郷や実家がある市町村や、自分が応援したい自治体に寄付ができる制度です。
手続きをすると、自己負担金(2,000円)を除いた寄付金額が税制優遇されたり、寄付先の自治体から返礼品が受け取れる魅力的な仕組みです。最近では、多くの方が利用するようになりました。
自己負担金とは?
ふるさと納税には、必ず2,000円の自己負担金が必要です。
自己負担金は、あくまで自分が払うお金なので、税制優遇の対象にはなりません。
ふるさと納税の限度額を超えた分は、
純粋な寄付になってしまう!
ふるさと納税は、所得と家族構成により限度額が決まる仕組みです。
この上限額というのは、「税制優遇を受けられる上限」のことを指します。
限度額を超えてもふるさと納税はできますが、限度額を超えた分は純粋な寄付となり、控除や還付の対象外となります。
あなたのふるさと納税の限度額はいくら?
年収は普段の生活にもなじみがあり、パッと自分の年収は言える人も多いと思います。
ところが、所得となると迷う場合があるかもしれません。
年収での目安表で、おおよその上限額がわかると便利です。
※ふるさと納税は扶養にも関係しますので、16歳未満の子がいる場合でも、制度上は子なしとみなされます
※シングルマザー、シングルファーザーのご家庭の場合は、どちらか一方が働いている場合の列でご確認ください
夫婦共働きの場合、
妻も夫もふるさと納税できます!
ふるさと納税は、世帯ではなく、納税者各人が税控除の対象となります。
例を挙げてみますね。
【事例1】夫婦共働き、子なし、妻も夫もそれぞれ年収300万円
この場合は、それぞれが夫婦がそれぞれ28,000円の目安上限でふるさと納税の控除を受けることができます。
【事例2】夫婦共働き、子1人(扶養者は夫)、妻も夫もそれぞれ年収400万円
扶養の制度上、高校生(17歳以上)が「子」となります。
16歳未満の子は「子なし」になるので、注意してくださいね。
- 扶養者の夫は「夫婦共働きで高校生の子1人」の33,000円
- 扶養者でない妻は「夫婦共働きで子なし」の42,000円
が目安上限となります。
返礼品には何がある?
どんなものを選んだらいいの?
税制優遇よりも注目されているといっても過言ではない、自治体独自の返礼品。
返礼品は寄付額の30%相当という原則があります。
中には還元率が高いものがあり、気になっている人も多いのではないでしょうか。
還元率が高いものを選ぶとお得になりますね。
コスパがいいのは時価の返礼品!
ほとんどの自治体が返礼品として挙げるのが、地元の名産品・特産品。
自治体や生産者は、特産品をアピールして、地元の活性化につなげたい思いがあり、特に力を入れているんです。
名産品・特産品の代表例
- 肉、魚介、卵
- 野菜、きのこ、果物
- 米、パン、麺類
- 調味料
- 工芸品・民芸品
この中でも、肉、魚介、果物などは、かなりの品物が厳選された高級品です。
還元率が高いといわれる理由の一つです。
また、その土地でしか売っていない商品が送ってもらえるので、交通費の節約にもなりますね。
市販品は市場価格調査をしてから!
返礼品の中には、地元企業を応援する目的で、家電や雑貨、ビールなど、店舗やインターネットで買える市販品もあります。
ふるさと納税は税制の優遇を受けれますが、市販品は定価より安く売っていることが多いので、市場価格の調査をしてから、自分で買うのか・返礼品にするのかを決めても遅くはありません。
割引やポイントで手軽に買えるものだと、お得な感じはしませんね。
旅行などのアクティビティは狙い目!
いつかは行きたい憧れのリゾート。
泊まってみたいホテル。
やってみたい体験。
ふるさと納税には、宿泊券や体験割引券などもあります。
自治体や宿泊施設が、ふるさと納税対応の特別プランとして用意しているので、還元率が高くお得な場合が多いですよ。
思いやり返礼は「善意の寄付」
思いやり返礼は、子どもたち・障がい者・高齢者などへの支援、NPO法人などの支援、被災地への支援などがあります。
返礼品は、感謝状などの気持ちであることがほとんどですが、コロナ被害事業者支援など、一部返礼品がある場合があります。
返礼品はいつ届くの?
返礼品によってまちまちです。
年中生産していたり、在庫があるもの・冷凍されているもの・金券などは、ふるさと納税後に比較的早く届くようですが、季節のものなどは、発送までに日にちがかかることがあります。
また、毎月1回野菜の詰め合わせが1年間送られてくるなど、分割での返礼品もあります。
始め時と支払い方法のポイント!
いつ寄付する?
寄付をする年の所得がある程度わかったら
はじめてふるさと納税をする場合、いつ寄付していいか迷いますね。
会社員の所得は給与(基本給、手当、残業代、ボーナスなど)や生命保険料、住宅ローンの残高、iDeCoの掛金などで毎年変わります。年末が近づくと、その年の年収がある程度わかってくるのではないでしょうか。
ふるさと納税は12月31日までに決済が完了すれば、その年に納税したことになります。
家族が払ったらNG!
必ず本人名義で支払うこと!
夫のふるさと納税を妻が代わりに自分のクレジットカードで支払った、というのはよくある失敗です。
ふるさと納税の恩恵を受けるには、どんな支払い方法でも、控除を受ける人と決済する人は同一である必要があります。そうでないと、税制優遇を受けられなくなる場合があります。
家族カード決済などの例外もありますが、間違えないためにも、本人名義のカード、本人名義の銀行口座を使用して決済しましょう。
豆知識:ポイント還元率の高いカードでよりお得に
ふるさと納税の決済にはクレジットカードが使えます。
返礼品などに目がいきがちですが、クレジットカードのポイントも貯まります。
還元率の高いクレジットカードで決済するとよりお得です。
寄付すると損をするのはどんな人?
ふるさと納税は誰でも行うことができますが、すべての方にメリットがあるわけではありません。
お得になるのは、所得税や住民税を自分で払っている人になります。
以下のような方は税制優遇の対象外なので、注意しましょう。
専業主婦・主夫の方
専業主婦・主夫の場合はそもそも無収入なので、税制優遇の対象外です。
配偶者控除、配偶者特別控除を受けている方
パートやアルバイトで働きながら扶養に入っている場合は、メリットはありません。
配偶者(納税者)がふるさと納税をしましょう。
ふるさと納税は年末調整の対象外!
確定申告かワンストップ特例で申告しよう
会社の年末調整では、ふるさと納税の控除を受けることはできません。
「確定申告」か「ワンストップ特例」のどちらかで、自分で申告する必要があります。
ふるさと納税以外で 確定申告 が必要な場合( 医療費控除 や住宅ローン控除など)は、ワンストップ特例 は使えませんので注意しましょう!
ワンストップ特例は手続きが簡単!
寄付先が5自治体を超えたら確定申告を
ワンストップ特例は、確定申告に比べて簡単です。
返礼品と一緒に届く必要書類をふるさと納税先の自治体に送るだけで、住民税控除手続きを受けられます。
寄付先が5自治体を超えた場合、限度額が余っていてもワンストップ特例の対象外になってしまうので、確定申告で申請しましょう。
どっちがお得?
確定申告とワンストップ特例
ふるさと納税の税制優遇は、「所得税の還付」「住民税の控除」に分かれます。
この還付と控除の違いで、損をした気分になる方がいるので詳しく説明しますね。
- 「還付」とは、払いすぎた税金を現金で返還すること
- 「控除」とは、払わなければならない税金がある場合に、確定している税金額から差し引くこと
確定申告とワンストップ特例では、どちらが適用されるのでしょうか?
確定申告では、 「所得税の還付」「住民税の控除」 が行われるのに対し、ワンストップ特例では、所得税からの還付は行われず、その分も含めた控除額の全額が、ふるさと納税を行った翌年度の住民税の減額という形で控除されます。
つまり、どちらを使用しても、額は結果的にほとんど変わらないことがほとんど。
自分で自由になる還付金が発生するか・しないかの違いです。
寄付金額を見直すときとは?
毎年、ふるさと納税をしていると、「去年と同じ額をふるさと納税すれば大丈夫!」となりがちです。
とはいえ、状況は年ごとによっても変わるもの。
ここでは、ふるさと納税額の見直しポイントを解説します。
【見直しポイント1】扶養家族が増えたとき、減ったとき
扶養家族が増えたときはふるさと納税の限度額が下がります。
よくあるのが、こちらの2つです。
1. 配偶者が、配偶者控除や配偶者特別控除の対象となったとき
「103万円の壁」「150万円の壁」以内の配偶者がいる場合になります。
パートやアルバイトで勤務することになり、扶養に入ることになった場合などがあてはまります。
2. 子どもが扶養家族となったとき
その年の12月31日時点で16歳で、かつ年間給与収入が103万円以下の場合の子どもがいるときは、扶養家族が増えます。
よくあるのが高校生になった年です。
ただし、早生まれの場合は、その年の12月31日時点では15歳のため、扶養の対象になる時期が翌年になるので注意しましょう。
また逆に、扶養家族が減った場合はふるさと納税の限度額は上がります。
勘違いが多いのは、子供が社会人になり自分で稼ぐようになったときです。
【見直しポイント2】収入に影響があったとき
給与・手当・ボーナスなどの増減、転職での年収アップダウン、ライフイベント(結婚・出産・育児・介護など)にともなう収入への影響などがあったときです。
【見直しポイント3】住宅ローン控除が終わったとき
住宅ローン控除は、控除額が大きいぶん、終わった翌年は所得税がグッと上がるので、限度額の見直しをするべきです。
所得税はその年に払わなければならないので、しっかり家計と相談してから決めるようにしましょう。
具体的に事例を紹介!
働く女性が失敗したケース
ふるさと納税の税制優遇を受けるには、税金の知識が必要になってきて難しいことも多いです。
働く女性が損してしまった5つの事例で、これまで学んだことをおさらいしていきましょう。
※ふるさと納税には所得が関係するので、「所得」で表記しています。年間の総収入ではないことにご注意!
【失敗例】ふるさと納税の限度額を知らずに損したケース
Aさんの場合(25歳、正社員、一人暮らし、所得195万円未満)
Aさんの趣味はSNS。特にインスタグラムは写真がメインなので、グルメやファッション中心に写真を投稿するのが日課です。
ある日、友人がふるさと納税を始め、返礼品の美味しそうなお肉を投稿していました。
たくさんの「いいね」やリプもあり、とてもうらやましいAさん。
自分もふるさと納税で返礼品を投稿したいと思い、さっそくインスタ映えしそうな返礼品を選び始めました。
ちょっと高いなあと思いつつも、返礼品には満足で、インスタグラムも好評です。
そして、ふるさと納税をしたから住民税がなくなると思っていたAさん。ところが、天引きされる住民税額は一向に減りません。
ただ、ふるさと納税は、自分の所得により上限額があります。
上限を超えた分は、税制優遇の対象にはならず、ただの寄付となるので注意が必要です。
そして、Aさんのように、「ふるさと納税=自分の住んでいる自治体の住民税がなくなる」と思っている方もたくさんいらっしゃいます。ふるさと納税はあくまで寄付なので、寄付先の自治体が代わって住民税の手続きをしてくれるわけではありません。
もし、自分で手続きしていたとしても、住民税に影響が出るのは翌年の6月以降です。
【失敗例】世帯年収と支払い方法で損したケース
Bさんの場合(31歳、契約社員、夫と二人暮らし、所得330万円未満)
Bさんは、「お得だよ」という友人の勧めもあり、ふるさと納税を始めることにしました。
お得なので、とにかく早く始めないと思ってしまったBさん。
夫がちょうど繁忙期に入ってしまったこともあり、家族であまり話ができていなかったのですが、焦っているBさんは、世帯の年収を合計した額を上限シミュレータに入力し、計算結果額でふるさと納税をしてしまいました。
ふるさと納税は計画的に行いましょう。
そして、上限額は、年収ではなく年間所得で決まります。
シミュレーションサイトに年収を入力してしまうと、本来の上限額を大幅に超えてしまい、余分に寄付をすることになります。
また、Bさんの場合は世帯年収で計算してしまったので、かなり損をしていますね。
計算は世帯年収ではなく、必ず個人の所得で!
【失敗例】手続き忘れ・間違いをして損したケース
Cさんの場合(35歳、契約社員、夫と3歳・6歳の娘と4人暮らし、所得195万円未満)
Cさんは、仲良くなった保育園のママ友と、休日にお茶をするのが息抜き。
ママ友の勧めもあり、以前から気になっていたふるさと納税を1月に始めました。
普段から仕事に家事に育児に忙しいCさん。地域委員の活動も加わり、大忙しです。ふるさと納税をしたことはすっかり忘れてしまっていました。もちろん、ふるさと納税と一緒に届いた書類のことも。
そして、ふるさと納税以外の税金控除の書類を会社に提出し、年末調整を終えました。
そして、もし、Cさんがふるさと納税先自治体から届いた書類(寄付金受領証明書といいます)を持っていて、年末調整時に会社へ提出しても意味がありません。
ふるさと納税は年末調整でなく、確定申告やワンストップ特例制度を使用しなければなりません。
【失敗例】ワンストップ特例で損した気持ちになったケース
Dさんの場合(36歳、派遣社員、夫と10歳の息子と3人暮らし、所得330万円未満)
ふるさと納税のワンストップ特例制度がカンタンそうだからと使用したDさん。
ふるさと納税をすると住民税だけ安くなると思っており、所得税にも影響があることは知りませんでした。
そして、安くなった分だけ銀行振り込みで還付が受けられると思っていました。
実際には翌年6月から住民税は控除されていましたが、現金は戻ってきません。現金がもらえると思っていたDさんは不満そうです。
ところが、Dさんのように現金還付を期待している場合は、確定申告が必要です。
住民税は控除、所得税は還付、というのが大前提だからです。
現金は所得税分しか還付されません。
実際には所得税での還付分が住民税の控除に上乗せされているので、損はしていませんが、もらえるものがなくなったような気になると、気持ちの上では損をした気になりますよね。
税制優遇をしっかり知って、気持ちもスッキリさせましょう。
【失敗例】ふるさと納税額を見直し忘れて損したケース
Eさんの場合(39歳、正社員、夫と16歳の息子と3人暮らし 所得330万円未満)
Eさんは、毎年ふるさと納税を行っています。
夫より給与が少し多いため、息子を自分の扶養に入れていたのですが、今年は息子が高校に進学しました。
去年のふるさと納税上限額を覚えていたEさんは、今年も同じ額でふるさと納税を行いました。
ふるさと納税の上限額は、扶養家族が増えると変わります。子どもが扶養家族となるのは、その年の12月31日時点で16歳で、かつ年間給与収入が103万円以下の場合。
いわゆる早生まれか遅生まれかによっても違いますが、中学を卒業した翌年度は、上限額の見直し目安年度になるといえるでしょう。
ふるさと納税で損をしてしまうのは、とてももったいないです。
特に、確定申告やワンストップ特例について知らないと、失敗確率も上がります。
まとめ
ふるさと納税は、正しく払えば払った分がしっかり戻ってくるし、返礼品もあるので、お得な制度です。
ポイントをおさえて、損しないようにしましょう!
損をしない!ふるさと納税のポイント
- 限度額を確認しよう!
限度額を超えて寄付をすると損をする - 申告は自分で行う!
確定申告かワンストップ特例のどちらかを選ぶ
- 支払いは申請者名義!
家族が代理で支払ったら申請できない - 毎年見直そう!
収入や扶養家族の数が変わったときは要注意
- この記事の監修者
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- 伊藤 佑梨
- ファイナンシャルプランナー/DCプランナー/証券外務員Ⅱ種/ライフプランアナリスト
- 大手電機メーカーをはじめ、さまざまな企業の共済会会員の個別ライフプラン相談の経験を積む。世代別、ライフスタイル別によく陥りがちなマネープランの分析と的確なアドバイスには定評あり。
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- 木村 美月
- 証券外務員Ⅰ種/ライフプランアナリスト
- 証券会社で資産運用アドバイス業を経て保険業界へ。お金とお寿司が好きで「お金は合理的に正しく使う」をモットーにしています。経済的な流行・トレンドも分かりやすく解説していきます。